原作・やけっぱちのマリアとは?



①早すぎた学園ラブコメ

(以下の解説は原作のネタバレが含まれておりますので、ご了承ください)
 

やけっぱちのマリアは手塚治虫が原作で

 

1970/04/15-1970/11/16


「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)にて

 

連載されました。

 

同時期少年ジャンプでは、永井豪先生の『ハレンチ学園』が大流行。スカートめくりがモーレツに日本中を大流行させましたが、性差別と同時に教育に悪いと、社会問題にも発展したとされています。

そこに手塚治虫は医大生であった過去や、悪書追放運動の中でマンガを世間に認めてもらいたい苦労、

そして何より、そのハレンチ学園に対抗して自分も流行りの『不良と学園闘争』を描きたいと思ったことが、この作品を生んだとされています。 

・・・が人気があったかなかったか、はたまた『不良闘争と性教育』のテーマという、今見ても異色なテーマだった故か、凡そ1年ほどで連載は終わり、作者の手塚は今作を 『やけっぱちに描いた失敗作』と自虐しています。

しかし・・・本当にそうなのでしょうか・・・?

 

以下の項目では、原作解説のみをしております。



②強えーけど孤独な不良少年『焼野矢八(ヤケッパチ)』に宿り、その後   ダッチワイフで 肉体を得た『マリア』

 

主人公矢八は中学の喧嘩番長だが一匹狼ある日突然、体内に妊娠したかのごとく、おもっ苦しさと性教育に対する熱意を持ったことで、敵対する同中学の不良集団『タテヨコの会』に油断の隙を与えてしまうが、そんな矢八は追い詰められた途端、

矢八の体から生霊(エクトプラズム)が飛び出し、

町中が大パニックに!

 

その後、霊媒師の協力と唯一の理解者の秋田先生により、

生霊は女性と分かり、更に代わりの肉体が必要

なことから、結果、等身大のダッチワイフ(親父

の)に宿ることになり、 こうして矢八の女性バー

ジョンこと、マリアが誕生。

それから矢八は、学校にマリアを連れて行ったことから、矢八とマリアは数々の事件に巻き込まれる。
(・・・と同時にこれでもかと、性についての解説が入る。でも福岡県では禁書となってしまった)

 

手塚作品は、こういった普通の主人公と特殊なヒロインの構図が多く、更にマリアの発生源は『矢八の母親の転生と矢八の精神』とされていることから、母性性も強く感じられます。

 

私の卒論担当教授は「自分同士のセックス」「手塚の孤独でも生きられる、愛の巣の生命理想像」と
例えていました。
もう少し、ギャルゲーの様に同類のペアがいるとより盛り上がるんですがね・・・。


③サディスティックでツンデレ属性の『雪杉ミドリ』

この作品のライバルヒロイン。手塚マンガであれど非常に珍しい暴力的で性欲的な存在としてかかれています。


ミドリは不良集団・タテヨコの会のナンバー1として中学に君臨しており、家は金持ち、きついが美人と、女王としての風格で中学生徒を支配していると、まーキャラは面白いですが、実に彼女にしたくねぇですね。



④(ネタバレ注意)なんだかイヤな原作ラスト「リア充になった主人公」

ところがこの作品、ラストの展開は
◎『宿敵タテヨコの会と、そのサド女王・ミドリに決着をつける』
◎『マリアのダッチワイフの物理的肉体が避けつつあり、
保てなくなりつつある』
◎『遂に矢八に理解者で、人間の女の子「羽澄マリ」が現れる』
といった、期待と緊張が高まる展開になります。
が、『マリアの肉体に限界が来たこと、羽澄が現れたことで、 マリアは矢八から分かれることを決意してしまい、矢八もあっさりマリアとダッチワイフの肉体を包んで、箱ごと川に流してしまう』

という展開も含めて不法投棄なラストを迎えてしまい、その後は
ナチュラルジャスティス☆羽澄と、満縁ラブラブエンドと

『マリアの存在が、脱童貞の過程に

 

過ぎなかった』

という、あんまりなラストに。

手伝いで読んで下さった

同世代の友達も「美少女、ギャルゲー好きとして、許せない終わり方だ」といった意見が多く、

 

生命倫理的には、羽澄との恋愛が正しくも、ラストパッと出てきただけのヒロインに寝取られるエンドには納得がいかないところがあります。

 

現代の少子化やリア充と呼ばれる

(男女恋愛さえも貴重で皮肉られている)

には、綺麗な終わり方と言い切れない部分が

あるでしょう。

そこで今作の原作のリメイク企画には、


『納得のいかないラスト展開をどう

 

替えるのか』も考察の余地があります。

 


⑤原作感想 ~可能性への提示~

シンプルにまとめると、とにかく現代でもウケる設定が数多く、

非常に惜しい作品なのです!

 

〇『学園ラブコメ』

〇『少年マンガ』

〇『ヒロインが異形の美少女での萌え』

〇『自分の異性=性転換的』

〇『ライバルヒロインが、黒髪ロング・ツンデレスケバンで羅漢的』

〇『性表現へのギャグと教育的描写のミックス』

〇『架空で魂のヒロイン・マリアと実際の少女・羽澄との三角関係』


と、なんというか、この作品には世間一般の健全な手塚治虫の印象じゃない傾向が、

ほぼ全て統一しているが故の、逆に性と生への痛快さと面白さがあるのです!


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